合併があった場合、基本的には資産売買があったと考えます。時価でなくなる会社の資産負債を残った会社に売ったとされます。なくなる会社で売却益又は売却損が発生します。
しかし、合併前後の法人の実態があまり変わらない場合は時価でなく簿価で資産負債を残った会社に引継ぎます。なくなる会社で売却益、売却損は発生しません。これが税制の適格合併です。
ここでよく間違えるのが適格合併は強制摘要です。これはどういうことかというと、適格合併の条件に合致すれば資産負債を時価でなく必ず簿価で残った会社に引継ぎます。
合併の適格要件を確認していきます。合併には、(1)100%親子会社での合併、(2)50%超100%未満の親子会社での合併、(3)(1)(2)以外の3パターンがあります。3パターンで適格要件が違ってきます。
(1)の場合の必要な要件
①金銭等不交付要件
但し、親子会社間でない場合(A社がB社とC社の100%子会社である場合のB社とC社の合併)、A社は合併時に売却することを決めてはダメです(完全支配関係継続見込要件)
(2)の場合の必要な要件
①金銭等不交付要件
②従業者引継要件
③事業継続要件
(1)と同じように親子会社間でない場合は、同様に支配関係継続見込要件はあります。
(3)の場合の必要な要件
①金銭等不交付要件
②従業者引継要件
③事業継続要件
④事業関連性要件
⑤規模要件または経営参画要件
⑥株式継続保有要件
①②③④⑤⑥を簡単に説明します
①はなくなる会社の株主にお金や資産を渡さないこと。しかし次の場合はお金や資産を渡しても大丈夫です。配当見合いの合併交付金、反対株主の買取請求、端株の代り金です。
②はなくなる会社の従業者の約8割以上が残った会社の従業員になること。この従業者の範囲ですが、取締役・監査役・使用人(他の会社への出向者を除く)・出向により受け入れている者・派遣社員・パート・アルバイトです。
③はなくなる会社の事業が残る会社に引継がれること。合併でなくなる会社の事業が消滅する場合、この要件を満たせません。この要件で注意したいことは、「事業」です。事業とは場所(事務所、店舗、工場)、従業者(役員の場合はその業務に従事している)、売上げが上がる、この3つが必要です。
④はまず③同様に、場所、従業者、売上げが上がる、この3つは「事業」として必要です。これはなくなる会社、残る会社両方とも必要です。なくなる会社、残る会社の事業が同種であるか、または商品サービス等が類似しているか、または商品サービス等が相互に活用できるかのどれかが必要です。
⑤の規模要件はなくなる会社と残る会社の売上、従業者数、資本金額のいずれかが1:5の範囲であればOKです。よく使われるのが資本の金額です。
⑤の経営参画要件とは、残る会社の特定役員のいずれか一人が合併後も特定役員となり、かつ、なくなる会社の特定役員のいずれか一人が合併後も特定役員となればOKです。特定役員とは社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役、代表執行役またはこれらに準ずる者で法人の経営に従事しているものをいいます。合併とは関係ありませんが、株式移転・交換の場合は全ての役員が必要です。
⑥は例を使った方がわかり易いです。なくなる会社の株主がA氏、B氏、C氏であるとします。それぞれがなくなる会社の株を50株ずつ持っていたとします。合計は150株です。A氏が合併後に1株でも売ったとします。合併後に継続して保有が見込まれるのはB氏とC氏の100株です。100株÷150株で80%未満となります。これが80%未満だと⑥の要件は満たせません。ですが、なくなる会社の株主が50人以上の場合は関係ありません。
税金の為に適格要件を無理やり当てはめてもかなり大きいリスクがあります。これはお薦めできません。合併の目的を税金の為ではなく、儲ける為、赤字を少なくする為、組織を強くする為等にして頂ければと思います。