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2014.11.24

役員給与の基礎

損金となる役員給与の具体的な範囲は、原則として、①定期同額給与、②事前確定届出給与、③利益連動給与の3つとされています。

①定期同額給与とは、定期同額給与とは、支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与のうち、事業年度の各支給時期における支給金額が同額であるものなど、所定の役員給与を言います。

このため、役員給与の支給金額が変更される、役員給与の改定の取扱いが問題になります。定期同額給与の改定につき、法律上は有効と取り扱われる改定を所定の改定に制限した上で、原則として「事業年度開始の日から給与改定後の最初の支給時期の前日まで」及び「給与改定前の最後の支給時期の翌日から当該事業年度終了の日まで」の間の各支給時期における支給額が同額であるものが、定期同額給与に該当すると規定しています。つまり、所定の改定であり、かつ改定前後で同額でありさえすれば、定期同額給与に該当して損金の額に算入することができるのです。

3月以内という期間は、会社法において、役員の職務執行期間が今回の定時株主総会から次回の定時株主総会までとされていることを踏まえたものです。3月決算の上場企業について考えていただくと分かる通り、これらの会社は事業年度開始日(4月1日)から3月後の6月中に定時株主総会を行うことが通例ですが、これは会社法で事業年度開始日から3月以内に定時株主総会を行うよう定められているからです。3月決算の場合は、6月の定時株主総会で7月からの増額決定を行います。

実務上は定時株主総会において役員給与の金額を改定することが多く、かつ職務執行期間である次回の定時株主総会までは役員給与の金額は変更されないことが通例です。この点を踏まえ、法人税法上は、職務執行期間中役員給与の金額が同額になるよう、定時株主総会が開催される3月以内の改定と、その改定後の同額の役員給与の支給が求められています。

なお、中小企業の場合には、法人税の確定申告期限が原則として決算日から二か月以内とされていることもあって、定時株主総会を決算日から二か月以内としているところが大多数と思います。このため、定時株主総会までの最初の二月(3月決算法人の場合には、4月と5月)の役員給与が同額であり、かつその後三か月目(3月決算法人の場合には、6月)から改定後の役員給与の同額支給がなされることが、中小企業においては一般的です。

②事前確定届出給与とは、役員賞与を支出する場合などに使われるものです。賞与は毎月出すものではありませんから、①の定期同額給与に当たらず、原則損金にはならないとされていますが、その例外としてこの制度が認められています。

例えば、×1年7月25日に役員賞与を200万円支給する予定であれば、所定の期日までに「×1年7月25年に、200万円を支出する」という届出をあらかじめ税務署に行い、その通りに支給をすれば、この役員賞与は損金に算入されます。つまり、支給時期や支給額を、あらかじめ税務署に届け出た上で、その通りに支給した場合に認められるのがこの事前確定届出給与なのです。

③利益連動給与とは、同族会社に該当しない法人に対してのみ認められているもので、取締役等に対して支給する自社の業績に連動した給与のうち、次の要件を満たす給与をいいます。1.同族会社でないこと 2.利益指標などを基礎とし、かつ所定の方法で決定等される客観的なものであること 3.利益指標等が確定した後1月以内に支払われ、又は支払われる見込みであること 4.決算において費用又は損失として経理(「損金経理」といいます。)をしていること

利益連動給与の損金算入が認められる要件は非常に厳しいです。このため、上場企業のように、コンプライアンスの水準が高い会社でなければ、損金となる利益連動給与を支給することは、現実問題としては難しいと言われています。加えて、日本の中小企業のほとんどは、家族経営である同族会社ですので、実務上この利益連動給与を目にすることは多くはありません。

 

 

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