適格合併をした場合の繰越欠損金について
適格合併をした場合の繰越欠損金について、かなり難しいので少しだけでもわかりやすく説明したいと思います。
1.適格合併をした場合、要件を満たしたときは、なくなる会社の繰越欠損金が残った方の会社で使えるかもしれません。次の順番で判断していきます。これは残る会社の欠損金も同じです。
①残る会社がなくなる会社の株を49%持っていたとします。これが50%以下だとなくなる会社の繰越欠損金、残る会社の繰越 欠損金が使えます。
②平成20年1月1日にA会社がB会社の株を51%買ったとします。A会社とB会社は50%超の株を保有しました(支配関係)。平成25年1月2日にA会社とB会社を合併します。この2つの間が5年超であれば、なくなる会社の繰越欠損金、残る会社の繰越欠損金が使えます。
③いわゆるみなし共同事業要件を満たせば、なくなる会社の繰越欠損金、残る会社の繰越欠損金が使えます。
a事業関連性要件・・・なくなる会社の事業が残る会社に引継がれること。合併でなくなる会社の事業が消滅する場合、この要件を満たせません。この要件で注意したいことは、「事業」です。事業とは場所(事務所、店舗、工場)、従業者(役員の場合はその業務に従事している)、売上げが上がる、この3つが必要です。これは適格合併の事業関連性要件と一緒です。
b規模要件・・・・・ 規模要件はなくなる会社と残る会社の売上、従業者数、資本金額のいずれかが1:5の範囲であればOKです。よく使われるのが資本の金額です。これは適格合併の規模要件と一緒です。
c規模継続要件・・ 平成23年1月1日にA会社がB会社の株を51%買ったとします(50%超を有する支配関係)。平成26年1月1日に合併したとします。平成23年1月1日(支配関係)と平成26年1月1日(合併時)のA社の規模が2倍になっていないこと、かつB社の規模も2倍になっていないこと。
d経営参画要件・・ 平成23年1月1日にA会社がB会社の株を51%買ったとします(50%超を有する支配関係)。残る会社の平成23年1月1日前の特定役員のいずれか一人が合併後も特定役員となり、かつ、なくなる会社の平成23年1月1日前の特定役員のいずれか一人が合併後も特定役員となればOKです。特定役員とは社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役、代表執行役またはこれらに準ずる者で法人の経営に従事しているものをいいます。
abc又はadを満たせば、なくなる会社の繰越欠損金、残る会社の欠損金が使えます。
④なくなる会社の資産の時価が1,000で、簿価が700とします。なくなる会社の欠損金は200とします。時価から簿価を引いた金額(300)が200より多ければ、なくなる会社の繰越欠損金、残る会社の欠損金は使えます。
①②③④がダメならば、使えない繰越欠損金があります。
2.なくなる会社の使えない繰越欠損金について(繰越欠損金の引継制限)
なくなる会社の会計期間が4/1~3/31、平成26年6月1日に合併、平成22年8月1日に残る会社がなくなる会社の株を51%を購入したとします(50%超の支配関係発生)。なくなる会社の繰越欠損金の内、平成21年3月31日(支配関係発生前の事業年度末)前に発生した繰越欠損金は使えません。平成21年4月1日(支配関係発生前の事業年度末の翌日)から平成26年5月31日(合併前日)の繰越欠損金のうち資産の含み損の欠損金は使えません。
3.残る会社の使えない繰越欠損金について(繰越欠損金の使用制限)
残る会社の会計期間が4/1~3/31、平成26年6月1日に合併、平成22年8月1日に残る会社がなくなる会社の株を51%を購入したとします(50%超の支配関係発生)。なくなる会社の繰越欠損金の内、平成21年3月31日(支配関係発生前の事業年度末)前に発生した繰越欠損金は使えません。平成21年4月1日(支配関係発生前の事業年度末の翌日)から平成26年3月31日(合併事業年度の前事業年度の末日)の繰越欠損金のうち資産の含み損の欠損金は使えません。